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結果と過程はどちらが重要なのか?:世界経済を破綻させる23の嘘 [経済]


世界経済を破綻させる23の嘘

世界経済を破綻させる23の嘘

  • 作者: ハジュン・チャン
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2010/11/19
  • メディア: 単行本



リーマン・ショック後によく見るようになった、資本主義に対する修正・歯止めの言論。
経済的な自由を最大限尊重することを美徳とする主流派に対する反対意見であり、このエントリで触れた「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」と同様の意見。
ただ、本書はアカデミックな表現が余り取られていないので、読みやすさはこちらのほうが上だ。

【目次】
経済の「常識」を疑ってみよう
市場は自由でないといけない
株主の利益を第一に考えて企業経営せよ
市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる
インターネットは世界を根本的に変えた
市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
資本にはもはや国籍はない
世界は脱工業化時代に突入した
アメリカの生活水準は世界一である
アフリカは発展できない運命にある
政府が勝たせようとする企業や産業は敗北する
富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
経営者への高額報酬は必要であり正当でもある
貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
すべては市場に任せるべきだ
教育こそ繁栄の鍵だ
企業に自由にうあらせるのが国全体の経済にも良い
共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
今や努力すれば誰でも成功できる
経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要


本書は23のテーマからなっているので、全てについて触れることはできないのだが、大雑把に言うと昔の日本や韓国、現在の中国など経済を大きく発展させた国々は必ずしもコテコテの自由主義経済ではなかった。というところから、自由主義経済の行き過ぎを論じているのが本書だ。

確かに、本書で言うことには一理あり、自由主義経済の行き過ぎは問題を引き起こすことも多い。貧富の差は間違いなく拡大するし、国家による調整が行われないので部分的な非効率は必ず生じてくる。
きちんとハマった場合には、国家による規制・指導などを加えた修正資本主義の方がうまくいくことは東アジアの生長の歴史から一定程度は真実といえるのではないだろうか。

ただ私は、(最善では無い)自由主義経済が主張されるのは筆者が言うように先進国が途上国を食い物にするためではないと思う。私が考える自由主義経済が主張される理由は、「うまく行かなかった時」の被害を最小限に留めるためだ。

自由主義経済に修正をかけるにあたっては、官僚なり議員なり必ず誰かの恣意が入る。当然そこには汚職や癒着の疑惑・誘惑も生じてくる。東アジアの国に済む人ならその問題点は誰もが理解するだろう。筆者も韓国出身なのでその辺の感覚はわかっているはずだ。最悪のパターンでは権力者の親族・支持者に対して国家の経済運営円滑化を題目にした経済的な支援がなされることになる。

経済成長に確実につながると分かっていても、特定の企業に肩入れをすることは許されるのだろうか。この問題に対する答えはぜひとも筆者に聞いてみたい。
私は、自由主義経済と言うのは民主主義と同じで、欠点こそあるものの平等を担保するために最大限尊重しなければいけないものだと考えている。

☆☆☆★(☆3つ半)

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