安全地帯から突撃を指示する内容:ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 [社会]
若者向けの労働相談NPOを主催する筆者が書いた、ブラック企業論。
単に個々の企業の問題として捉えるのではなく、ブラック企業が日本国に与える害悪の面からブラック企業を論じているところが特徴的。
【目次】
第1部 個人的被害としてのブラック企業
ブラック企業の実態
若者を死に至らしめるブラック企業
ブラック企業のパターンと見分け方
ブラック企業の辞めさせる「技術」
ブラック企業から身を守る
第2部 社会問題としてのブラック企業
ブラック企業が日本を食い潰す
日本型雇用が生み出したブラック企業の構造
ブラック企業への社会的対策
本書は第1部の「個人的被害としてのブラック企業」で筆者がNPO活動を通じて得ることの出来たブラック企業の実態と対策を、第2部の「社会問題としてのブラック企業」でブラック企業が日本に与える悪影響と対策を述べている。
本書の良い点は、筆者が実際のNPO活動を通じて得たブラック企業の実態がきちんと書かれているところ。
本書を読めば、ブラック企業は底辺学生のみがハマる罠ではなく、中の上程度の学生でもブラック企業によって人生を狂わされてしまう可能性があることが分かる。
そういう意味では、ブラック企業は誰にでも降りかかりうる災難であると言えるだろう。
ただ、筆者が第1部で述べるブラック企業への対策は現実的ではない。
筆者はブラック企業に対するには、辞めずに労働組合などを通じて待遇改善を求めていくことが望ましいとする。これは、ブラック企業を野放しにするのではなく改善していくことが社会的に効果が高いという考え方に基づいた意見だ。
だが、新卒でブラック企業にはいった人が1年後から2年~3年の法廷闘争・組合活動を経てブラック企業の労働条件を改善したとして、その人の人生はどうなるのだろうか?
ビジネススキルは一向にアップせず、労働闘争にだけは詳しくなる。そんな人が年金を受給できるようになる残り40年どうやってお金を稼いで行けるというのだろう。
ブラック企業に気付かずにはいってしまったら、さっさと辞めてまっとうなビジネスをやり直す。それが唯一の解だし、それが出来なければビジネス人生で大きなハンデを背負ってしまうだろう。
第2部はブラック企業が日本に及ぼす害悪について述べているが、一方的な見方が多い。
筆者は立場上、ブラック企業の影だけを見て光の部分を見ていないのだ。
日本にユニクロがなかったら、東証市場はどれほど冴えないものになっただろう?また、日本人の衣料費負担がどれほど増えただろう?
そうした一方的な見方が故に、筆者は「日本型雇用が生み出したブラック企業の構造」とまで言っておきながら古きよき日本企業のあり方を復活させるような主張をしてへんてこな結論に陥っている。
ブラック企業を改善するのは今となっては「城繁幸」の主張のほうが正解で、会社は簡単に従業員の首を切れるようにして、結果として雇用の流動性を高めて従業員は会社簡単に辞められるようにすることしか無い。
ブラック企業が日本の社会保障にフリーライドしているという筆者の主張は説得力が有るのだが、現在の国際情勢を見た時に、精神を病んだ社員を日本では解雇できないように規制して、筆者は日本企業が国際社会で競争に勝ち残れると思っているのだろうか?
このように、書かれている内容はビジネスマンからは納得できず、NPOや活動家の意見になってしまっているのが残念。
ただ、個々の事例は実際の活動を通じて得られたものだけあって、真実味を帯びた素晴らしい具体例だ。
☆☆☆★(☆3つ半)
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